PD Tracker ― パーキンソン病の症状と薬効を「見える化」するWebアプリを作りました

パーキンソン病の診療をしていると、「薬が切れる時間帯に症状がひどくなる」「朝は動けるのに夕方になると固まってしまう」といった訴えをよく耳にします。こうしたウェアリングオフジスキネジアといった運動合併症は、患者さんの生活の質を大きく左右するにもかかわらず、外来での短い診察時間では十分に把握しきれないことが少なくありません。進行期には複数の薬剤を併用するため、1日の中で薬剤の効果が弱くなる時間帯を把握し、適切な治療戦略を組むために、詳細な状態の把握が重要になります。

そこで、日常の症状と服薬状況を記録しながら、薬物動態モデルに基づく薬効曲線症状をリアルタイムで重ね合わせて確認できるWebアプリ「PD Tracker – パーキンソン病の症状・内服管理アプリ」を開発しました。

目次

PD Trackerとは

PD Trackerは、パーキンソン病患者さんが毎日の症状(OFF時間・ジスキネジア・Not good時間)と服薬スケジュールを記録し、文献ベースの薬物動態パラメータから算出した薬効予測曲線と症状記録を1つの画面で確認できるウェブアプリです。

本アプリは医師が患者の利益を目的として開発した非営利ツールです。無料で利用でき、商業的利用・個人情報の収集は行っていません。インストール不要で、スマートフォンのブラウザからそのまま使えます。記録データはすべてデバイス内のローカルストレージに保存されるため、個人情報がサーバーに送信されることはありません。

主な機能


日別の症状記録:OFF症状・Not good(薬効不十分)・ジスキネジアを時間帯と重症度で記録
・薬効曲線の表示:服薬時刻・用量から1区画モデルで推定した薬効予測を折れ線グラフで表示
・症状と薬効の重ね合わせ:薬効が低下した時間帯と症状出現のタイミングを視覚的に確認できる
・週間サマリー:ON/OFF/ジスキネジアの割合を曜日別の棒グラフで一覧表示
・処方履歴の管理:投薬変更の前後での症状変化を比較しやすい形で記録
・複数薬剤への対応:主要なPD治療薬の薬物動態パラメータを搭載 (個人差があるため参考値です)

薬効曲線の仕組み

薬効曲線は、各薬剤の服薬時刻・用量と、文献から収集したtmax(最高血中濃度到達時間)・t1/2(消失半減期)をもとに、1区画モデルで計算しています。複数薬剤の場合は、各薬剤のLEDD(レボドパ換算用量)比に基づくweight係数で合算しています。

用量の効果はEmax/Hillモデル(Hill係数=1)で正規化しているため、用量が増えるほど効果が高まる一方で天井効果も再現されます。あくまで個人の参考情報であり、診断・治療の根拠となるものではありませんが、「薬効が下がってきそうな時間帯に症状が出ているか」という仮説を視覚的に確認するツールとして活用できます。

使い方のイメージ

【日別記録画面】習慣的に入力する必要があるのは、「記録する」という画面のみです。調子が悪い時間帯があったら、患者さん本人か、介護者の方が入力してください。

【日次サマリー画面】記録した内容をもとに、薬効曲線(グレー)とOFF症状(赤)・Not good(オレンジ)・ジスキネジア(紫)を時間軸で重ね合わせて表示します。服薬時刻には▼マーカーが付き、「薬効が下がる時間帯とOFFが一致しているか」を直感的に確認できます。

【週間サマリー画面】過去3週間までのON/OFF/ジスキネジア割合を曜日別の積み上げ棒グラフで表示します。また、OFFやジスキネジアが生じやすい時間帯を特定します。

【治療薬画面】1日分の全薬剤の薬効曲線を薬剤ごとの色で表示します。グラフ内に収めるために効果量のスケールは調整されており、あくまで参考値です。症状の出現パターンからOFF域閾値・ジスキネジア域閾値を手動で設定でき、どの時間帯にリスクがあるか一目でわかります。過去の処方パターンと比較することも可能です。推定OFF・ジスキネジア時間は、実際に記録された時間でなく、設定した閾値に基づいて計算しています。

【設定画面】OFF、ジスキネジアの閾値の設定、服用中のお薬の設定、処方内容の記録、バックアップの作成ができます。これらの内容をもとに、「日次画面」「治療薬画面」の予測薬効曲線が表示されます。

また「処方の記録」をもとに、「処方変更前後の比較」の「比較元(変更前)」が作成され、内容の比較が可能です。また本アプリはブラウザに自動保存されますが、「キャッシュのクリア」などの操作で記録が消えてしまうため、「バックアップ・復元」からバックアップデータを定期的に保存することをオススメします。

デモサイトで動作を確認できます

以下のデモサイトに、サンプルデータがあらかじめ入った状態のPD Trackerを用意しています。「メネシット(レボドパ)単剤でOFFを自覚していた患者さんが、アジレクト(MAO-B阻害薬)を追加してOFF時間が軽減した」という典型的な経過です。薬効曲線と症状記録の対応、処方変更前後の週間サマリーの変化をご確認いただけます。

実際にご自身で使ってみたい場合は、下記の正式版(サンプルデータなし)をご利用ください。

2026.4.9 現在はテスト版 ver 1.0です。内容は予告なく変更される場合があります。

対象となる方

・パーキンソン病と診断されており、薬効の波に悩んでいる患者さん
・症状日誌をつけたいが、紙での記録が続かない方
・主治医との診察で「どの時間帯にOFFが出やすいか」を伝えたい方
・投薬変更後の効果を客観的に確認したい方

スマートフォンのホーム画面に追加する方法

PD trackerはインストール不要のWebアプリですが、
ホーム画面に追加しておくとアプリのように起動できます。

iPhoneの場合(Safari)

  1. SafariやChromeでPD trackerのページ(https://nshalnote.com/pd-tracker/)を開く
  2. (Safari)画面下部の「共有」ボタンをタップ 
    (Chrome)画面下部の「共有」ボタンをタップし、「もっと見る」を押す
  3. 「ホーム画面に追加」を選ぶ
  4. 名前はそのまま「PD tracker」でOK →「追加」をタップ

Androidの場合(Chrome)

  1. ChromeでPD trackerのページを開く
  2. 右上の「⋮(メニュー)」をタップ
  3. 「ホーム画面に追加」または「アプリをインストール」を選ぶ
  4. 「追加」をタップ

ホーム画面にアイコンが追加され、次回からはそこから起動できます。
起動後はアドレスバーが消え、アプリのように全画面で使えます。


ご注意

本アプリは情報提供を目的とした参考ツールです。薬効曲線はあくまで文献値に基づく推定値であり、個人差・食事・胃排出速度などの影響を反映していません。治療方針の変更や薬剤調整は必ず主治医にご相談ください。

記録データはお使いの端末のローカルストレージにのみ保存されます。ブラウザのデータ削除・端末変更の際はデータが消えますので、定期的に「設定」タブからバックアップをご利用ください。

今後の予定

現在はWebアプリとして公開していますが、今後はアプリストア対応なども検討しています。また機能拡張や、薬効予測曲線の精度向上、トラブルシューティングは継続的に行う予定です。フィードバックやご意見があれば、お気軽にお知らせください。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

脳神経内科医。脳画像解析と機械学習に関する記事を掲載します。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次